平面曲線の種々の特異点をまとめるに当たって:Newton-Puiseuxアルゴリズムの勉強
曲線の種々の特異点をまとめるにあたって曲線のような曲線を念頭に置いて考えていた。色々な特異点の状況を調べていくうちに、特異点において、はたして常に分岐が存在することは保証されているのだろうか?と、どことない不安を覚えた。曲線の特異点をイメージすれば当たり前のことなのだが、不安症な私は、どうにか担保しておきたいと思った。
以下は二つに分岐する特異点(nodeとかcuspとか)に関する私なりの証明で、ここにメモしておく。(更新があれば随時行っていく。)
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をの多項式、をなるの多項式とし、曲線を考える。ただし多項式において純粋にのみ存在する項はのみとし定数項は持たないとする。
この曲線に対してNewton-Puiseuxアルゴリズムを考える。(以下、NPアルゴリズムと略す。)
主な登場人物をまとめておく:
(ニュートン多角形におけるスロープの方程式。はニュートン多角形のいる平面の座標)
(-rootの係数が満たす方程式。は曲線中のの係数。スロープの最小の高さ。)
(NPアルゴリズムでの変数変換。は上記-rootが満たす方程式の解)
(NPアルゴリズムの対象の曲線。変数変換後に対象となる曲線)
一番示したいことは以下の主題である。
[主題].曲線において、NPアルゴリズムによって得られる-rootは必ず二つに分岐する。つまり、-root に対して、どれかの係数は相異なる二つの値を選択することができ、それ以外の係数は一つの値しかとることができない。
曲線に対してNPアルゴリズムを適用して得られる曲線の列をとし、この列を考える。
主題を示していくため随時主張を上げ証明していく。
[主張].ニュートン多角形のスロープとして以下のいずれかを取ることができる:
(1)もしくは
(2)
(3)
ただし、>はニュートン多角形の幅とする。
(1)の時、スロープは軸と軸上の二点か、上にあるもう一点を加えた三点を取る。
(2)の時、スロープは点の内の二点を取るか、の三点をとる。
[証明].
スロープの可能性として以下の三つの場合が考えられる:
・軸に平行である
・軸に傾いている
・軸に平行である
最初の場合、各曲線は純粋にを持つ項を常に持つのでスロープとしては軸上に居なければならない。(3)に該当する。
最後の場合、では曲線が純粋にを持つ項の最小次数となるが、この時-rootとしては曲線の部分曲線は不要なのでスロープは軸上にあるとしてよい。
また曲線の項を変数変換し曲線に現れる項を求めると、変数変換に対して
となり曲線はに対して二次より大きい項を持たないことがわかる。よって、スロープの通る点としてはの内二点をとるか三点をとる(一点のみをとる場合は既にアルゴリズムは終了している)。
(2)に該当する。
二番目の場合、軸上に点を取らなければならないので少なくとも二点をとる。(1)に該当する。
[QED]
[主張].曲線は必ずもしくはを項として持つ。
[証明].
曲線の方程式を変数変換すると
となるがのある項は項に寄与しないためとなる。つまりスロープの上にある項のみを考えればよい。
最初の列を考える。
は曲線のに関して最小次数の項のため、スロープの方程式の通る点は>の三点のみか>の二点のみである。
前者の場合
後者の場合
と展開され曲線でもは存在することが分かる。また、曲線で係数が分離解である場合は曲線のに関して最小次数を持つ項はであり、重解である場合は再びであることもわかる。
列を考える。
曲線は項を最小次数の項として持つ場合
方程式を同様に変数変換し展開すればを得るが曲線の仮定より定数項は消える。
曲線は項を最小次数の項として持つ場合
最初の議論と同様に項を最小次数の項として持つ。[QED]
[系].列のどこかで係数が分離解を持ったら以降の係数の値は一つに定まる。
[主張].列のどこかで列は分離解をとる。
[証明].
曲線は項もしくはを常に持つので、スロープの方程式はもしくは、またはである。
最初の曲線では定数項を持たないのでスロープの方程式がとなることはない。
分離解を持たないとして変数変換を行っていくと曲線の最高次の項に対して
と次数が減少していくため有限回のどこかで最終的に純粋にを持つ項は存在しないことになる。この時スロープはとなる。
スロープの方程式がの場合
分離解を持たないとして変数変換を行ってきたため、スロープは点を通る。スロープの通る点の総数が二点である場合は分離解を取るので三点通るとしてよい。この時、スロープに対応する曲線の多項式は
となるが変数変換を行うと曲線では
に対応する。仮にまだ曲線は分離解を取らないとするととなるため、曲線でのスロープは点を含まない二点をとる。この時係数は分離解をとる。[QED]
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以上が2022/08/08時点での証明である。証明自体は終わったのだが、さらに付け加えることとしては、-rootの係数が分離解をとった以降の係数は消えるのではないか、ということを予想しているので、その証明を述べることである。
修正履歴:
2022/08/13
用語の誤記を修正しました。また、スロープの方程式のパターンに関する証明を加筆修正しました。
参考文献:
Singularities of Plane Curves, Eduardo Casas Alvero, London Mathematical Society Lecture Note Series