Harmonic range, anharmonic ratio の説明
ルイージ・クレモナ(Luigi Cremona)の射影幾何学原論(Elements of Projective Geometry)[1, p39]を読むと、平面にある直線(向き付き)上の4点の組(順序付き)で以下の性質を満たすものの概念が述べられている:
(0.4点はという順に並べられているとする。)
1.点からそれぞれ二直線を引き四角形を形成する、ただしその四角形の一つの対角線の延長線は直線に点で交わるとする。
2.すると四角形の他方の対角線の延長線は直線に点で交わる。
3.手順1において対角線が直線に点で交わっていさえすれば、点からの直線の引き方に依らずに点が一意的に定まる。
つまり点を順に与えれば点を通っていさえすれば直線の引き方に依らず点が一意的に定まるのである。
例えば次の4点はこの性質を満たす:。
このような性質を持つ4点の組(順序付き)を harmonic range という。
この harmonic である性質を量で表そうとしたのが anharmonic ratio/cross ratio である。直線上の点から点への距離をと表そう。直線には向きが付いているのでである。このとき直線上の4点の anharmonic ratio は以下の量で表される。
この量がであるとき4点は harmonic であるという。最初に述べた harmonic という性質と同値である。
例えば先ほど述べた例を計算すると
anharmonic ratio は以下の性質を持っている:
第二の性質は点に対してという性質から導かれる。
anharmonic ratio は射影に関して不変量である。つまり平面上において、直線上の4点を、ある点からの射影で別の直線へ移しても anharmonic ratio の値は変わらない。
このことは純粋に射影幾何学的に示せる[1, p.54]が、メビウス変換の性質を使っても示せる、つまりメビウス変換の3変換(スケール変換、平行移動、逆数)で確かめればよい。このことはベルチーニの超曲面の射影幾何学入門(Introduzione Alla Geometria Proiettiva Degli Iperspazi Con Appendice Sulle Curve Algebriche E Loro Singolarita)[2, p.24]にも述べられている。
逆に anharmonic ratio の値が同じであれば一方から射影を繰り返して他方へ移ることができることが知られている。つまり anharmonic ratio は完全不変量なのである。
こちらはクレモナの射影幾何学原論でしか証明を知らない[1, p.56]。
以上は anharmonic range の説明である。
私はこれを直線上ではなく平面曲線上で考えれないかと思っている。それにはまず anharmonic ratio を平面上に拡張すれば良いのではないかと考えている。
参考文献:
[1] Luigi Cremona, Elements of Projective Geometry, 1885, English Edition, Forgotten Books
[2] Eugenio Bertini, Introduzione Alla Geometria Proiettiva Degli Iperspazi Con Appendice Sulle Curve Algebriche E Loro Singolarita, 1907, Kessinger's Legacy Reprints